大判例

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名古屋高等裁判所 昭和27年(う)961号 判決

原判決挙示の証拠を綜合すると、被告人は原審相被告人中村実が社長をしていた株式会社愛知農産公社に自動車運転手として雇はれていたもので、同相被告人が昭和二十五年七月頃、当時統制品であつた麦の所謂闇売買により利益を挙げようと企て原審相被告人河合一雄方へ生産者よりの其の買入斡旋方依頼に赴いた際右中村実の言葉に従つて情を知り乍ら之と同行し、其の談合に立会ひ、右河合一雄が手数料名義で一俵百円の報酬を受ける約束の下に之を引受け、亦後河合一雄自身直接若は同人が情を明して原審相被告人小池金作に転嘱し、之と協力し若しくは同人を介して生産者との間に買入の和合をすゝめた上之を前記中村実に通報すると被告人は右中村に命ぜられて同人より必要な買受代金手数料を託されて先方に赴き、前記河合一雄や小池金作の指示案内の許に直接若しくは同人等を介して生産者に其の代金を支払い之と引換に買入麦類を受取り、被告人の運転する自動車に積み込み之を前記中村実の指定した場所に運搬するという経緯の下に原判決引用の起訴状添付目録中進行番号1乃至37各下段記載の買入に関与した外其後前記、河合小池の両名を使つて同目録進行番号38乃至44下段記載の如く麦類の買受けを為したものであることを認められる。ところで右進行番号1乃至37の各売買につき被告人の演じた役割は相被告人中村実の企図実現上相当重要ではあるが前記証拠其他裁判所で取調べた各証拠を精査してみても被告人が此等売買につき運転手として従来受けていた給料以外に格別報酬等の利益を受けた形跡は全然ないから此等の被告人の行動はすべて雇主的な立場にある原審相被告人中村実の指示命令の儘に為されたものと見るの外なく、従つて此の分の売買につき被告人は勿論所謂闇買の幇助者としての責任は免れないところにあるが結局被告人に共同正犯の要件である他と意思を連絡し自己の犯意を実現しようとの意思があつたとの証明はないものといはねばならぬ。従つて原判決が起訴状通り此の分についても之と別種の前記進行番号38以下の売買と同様被告人に共同正犯としての責任あるものと認定判示したのは事実誤認の誤を犯したものといふべく右誤は原判決に影響すること明白だから論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

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